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景観 / デザイン社会制度
2017.10.16

「銀座ルール」を知っていますか? 
〜56mの高さ制限は街の人々がつくった〜

最近話題になったGINZA SIXは、もともと高さ200m以上の超高層タワーになる計画でした。しかしその後、新たなルールが策定され「銀座の建物は56mまで」と決まったことで今の形になったのです。そして、銀座に建物を建てるときには「デザイン協議会」との協議をしなければならないという新たなルールもできました。これらをつくったのは銀座の”街の人”たちでした。
竹沢えり子(銀座街づくり会議事務局長)インタビュー


僕は数年前「銀座にはなぜ超高層ビルがないのか」という本を読んで衝撃を受けました。自分はずっと民間の不動産の世界にいて、街の人たちがこうしてルールを変えていくことができるということを知らなかったのです。この本の著者、竹沢えり子さんへのインタビューを通して、銀座の街のデザインに関する歴史や状況、そして街のルールをつくるということについて考えてみます。 聞き手:林厚見(東京R不動産 / SPEAC)

竹沢えり子:(一社)銀座街づくり会議・デザイン会議事務局長、銀座通連合会・全銀座会事務局長。東京生まれ。慶應義塾大学文学部史学科卒。出版社勤務、企画会社経営を経て、1992年頃より銀座まちづくりに関わる。2011年東京工業大学社会理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。著書『銀座にはなぜ超高層ビルがないのか』(平凡社新書、2013)、共著『銀座 街の物語』(河出書房新社、2006)、『地域と大学の共創まちづくり』(学芸出版社、2008)ほか。



〜旧松坂屋の再開発(現:GINZA SIX)で超高層タワーの計画が出てきたことをきっかけとして銀座での建物高さの新ルールができたんですよね。どんな経緯だったんでしょう?

もともと銀座には、1998年につくられた地区計画による高さ制限があったのです。それが小泉内閣による都市再生特別措置法によって、特区指定による規制緩和ができることになったのですが、銀座の人たちが苦労してつくった地区計画の高さ制限が優先されないことがわかりました。つまり200mでもなんでも建ってしまうということだったんですね。そんなこと街の人は考えてもいなかったので、それはもう驚きました。それで、専門家にも加わってもらって猛烈に勉強しはじめたというわけです。

〜詳しい経緯は本の中にドラマティックに書かれているので読んでいただくとして、ともかく結果的には例外なく56mということになったわけですよね。

いろいろありましたが、そもそも銀座らしさって何だということから議論をはじめました。銀座の人たちが区と粘り強く交渉すると同時に、シンポジウムを開催したり町会や通り会を回ったり、さまざまな議論の場を設けました。でも、銀座らしさに絶対的な答えはないわけだし、開発する側とは利害が違うわけですし。

〜GINZA SIXに投資している事業者たちは、文句言わなかったんですか?

銀座を2つに割るようなことだけは絶対に避けたいと思っていました。外部の事業者さんや海外の投資家さんも静観してくださっていたと思います。それはやはり銀座に敬意を持ってくださっていたんだと思いますね。街の人たちとはうまくやっていかなきゃと思ってくださったというのもあるし、きっと銀座がそもそも持っている力みたいなものがあったとは言えるでしょうね。

2017年に開業し話題になったGINZA SIX。高さは住民たちの”戦い”により56mにおさえられた

〜気になったのは、法律的に可能な容積率に対してそれを抑える地区計画をつくろうとすると、個々のオーナーたちの財産権侵害みたいな議論にならないかとか・・そのへんはどうなんでしょう?

もちろんそう思っていた方もいらしたかもしれませんが、表立った議論にはならなかったですね。

〜へえ〜すごい。普通に考えると高く建てられれば土地の値段は上がりますからね。現実はそう単純なものじゃないというところが興味深いです。ところで、もう一つの大きな成果として「銀座デザイン協議会」ができて、銀座で開発をやる人は協議会と話し合わなくてはいけない、ということになったのですよね。

それも銀座が区に要望して、区が認めてくれたルールです。区の要綱に記されています。今では、年間約300件のやりとりをしています。「これは銀座らしくないからやめてください」「こう変えましょう」という話が主ですね。「銀座デザインルール」という冊子もつくっています。2006年に設立されましたから、10年以上になります。

〜年300件・・まじですか。そもそも住民団体がデザイン指導をするということ自体がすごいですよね。景観コードみたいのって言葉で決めてもなかなかうまくいかないものだから、そうして個々にやりとりするのは本来あるべきと思いますが。。だけど、協議会が街の代表意見であるっていうのは文句言う人がいそうな気がします。「選挙で選んだわけでもないし、役所でもないじゃないか!」とか。

それは実際ありえる話かもしれませんね。課題であることは確かですが、今のところ幸い、そういう問題は起きていません。協議はあくまで「お願い」であって、法的な縛りはないのです。そのユルさがあるし、「意見があるなら、銀座らしさについてもっと議論しましょう」「次はもっと良くしましょう」と、地元と事業者が話し合うことが、この協議の本来の目的だと思っています。

〜なるほど。みんな従ってくれるんですか?スーパーブランドとかも。

スーパーブランドの方々は、Ginza International Luxury Committee(国際ブランド委員会)を作って、街を盛り上げるための活動を一緒にやってくださってます。このようなグローバルブランドが会社を超えて何かを一緒にやっているのは世界でも銀座だけでしょう。

>へぇ〜!そうなんですか。

国内外事業者を含めて、結果的にこちらの「お願い」が通らないことはゼロではありません。そういう場合は、何度でも言い続けるしかありません。社長に手紙も出す場合もあります。区にもccします。そして年次報告会やデザインルールの冊子では悪い例として紹介せざるをえません。

>なるほどです。そもそも銀座の街づくりというのは昔からやってたんですか?

現在、銀座通連合会100年史を制作しているのですが、その資料をみてみると、100年前からずうっと、この街をどうするか、どうあるべきかという話をし続けていることがわかります。景観や交通、安全など、今と同じような課題を、戦前、いや関東大震災前から議論していたんです。

...

>竹沢さんはどういう立場なんでしょう?銀座に関わられるようになった経緯は?

かつてやっていた仕事の関係で銀座の会社にお世話になって、流れの中で銀座に関わるようになりました。まずは銀座の歴史に興味を持ち、銀座の歴史は日本の近代都市史そのものだとわかりました。そして銀座のさまざまな方にお会いしていくとどなたもとても魅力的で、いつしか「私はこの街で生きていく」と決めたんです。そうして銀座街づくり会議とデザイン協議会の設立にかかわり、今は銀座通連合会と全銀座会の事務局長を務めさせていただいています。

>そういう街の活動の原資はどういうものなんでしょう?

基本は会費です。もちろんすべての店が入っているわけではないですが、それで運営しています。また区からの補助金、企業からイベントなどへの協賛金もいただいています。

>そういうことですか・・いわば街場のBIDですね。ドライな市場原理と法律論だけでは説明のつかない世界ですよね。でも間違いなくそうした活動が街のブランド価値を守っているわけですよね。公共だけではできない価値を生んでいると。

そうですね。

>ところで聞きたかったことの一つとして、高い建物を建てないという決断は、単なる文化論的な話だけでなく、経済的な最適化とある程度沿ったものだという話にならないと難しいと思うんですが、そこはどういうコンセンサスなんでしょう?それとも経済とはあくまで別なんだ!という世界ですか?

経済と無縁という話ではもちろんありません。銀座は商いの街ですから、基本的には商いがやっていけるかどうかというのがまずあります。商いがうまくいき、なおかつ持続するかどうかということと、高層化して地価が高くなるかどうかとは違う論理だと思うのです。

>なるほど。

経済至上の論理では、地価があがればあがるほど町のブランド価値もあがり、経済効果もあり、それでハッピーという話なのかもしれませんが、代々の商いをやっている人たちからみれば、いたずらに固定資産税が上がり、結果として相続もできないよ!みたいな話になっても仕方ないんですよ。その地で商売している人たちの立場と、地価をあげて売り抜けたいと考える人たちとは、まったく発想が違います。

>なるほどです。そういう意味では、高層にせず、ある意味品格を保って商業地としてブランドが保たれることは合理的というわけですね。資産価値が上がることは、「経済合理」の評価の一軸でしかないと。

瞬間風速的な利益ではなく、数十年先のことを考えていますからね。相続税の問題は大きいと思います。

銀座には小さな個人店が多くある

>銀座フィルターという言葉がありますよね。銀座という街であるがゆえに、自然に品格が保たれる、誰もが土足で入ってこれない空気、みたいな。それはどうやって保っているんですかね?

脈々と積み上げてきたものが大きいのではないでしょうか。例えば若い世代への引き継ぎという意味では、銀実会という40歳までの経営者の会があります。彼らはもちろん本業がありながら、本当に一生懸命、銀座のために働く。イベントもほぼ全部彼らがやる。ここで徹底的に銀座らしさとか態度とか行政対応を教育され、「銀座フィルター」という精神も引き継がれていくんです。

>今後、そういう地域コミュニティのルールや文化に対して興味ないプレーヤーが増えてコントロールできない状況になっていく可能性もあると思うんですが、そうなったらデザイン協議なんかも要綱・お願いでなくもっと正式なルールにしていくこともありえるんでしょうか?

その議論はあります。今のところ、条例化までは考えていませんが、将来はありえるかもしれません。いわゆる旦那的な存在は減るでしょうし、個人店は大きな資本の流れには抗えないですよね。だからといって、資本のルールだけで街が変わっていくことに問題はありますから。しかしながら、どういう部分をどのように条例化するかは、慎重な議論が必要です。

>ヨーロッパだと、個人経営に対する優遇税制とか、反アマゾン法みたいなものもあるわけで、そういう価値観は全体幸福に向けてあってしかるべきだと僕も思います。暗黙のモラルが減れば、ルールをつくる必要がある。そしてそのルールが人々の常識感覚に逆に影響してくる面もあるような気がします。

これからもずっと私たちの活動や議論は続いていく。まちづくりに終わりはないし、ずっと議論しつづける、それができるコミュニティ(街の人だけでなく、来街者も含めて)をどう維持するかが大切だと思っています。

>他にはどういう課題があるんですか?

銀座で今、一番大きな課題は交通ですね。歩いて楽しい街、歩行者にとって歩きやすい街にすること。「銀ブラ」は銀座でもっとも大切な言葉のひとつです。銀ブラを楽しめる街にするために、どうすればいいか、それが原点な気がします。

>しかし竹沢さんたちの仕事って、超リアルに街づくりですよね。泥臭いことや大変なことも死ぬほどあるでしょうけど、街の姿や未来を直接的に牛耳っているとも言えるし、まさに街をデザインしているとも言えますよね。街づくりしたい、みたいなことを言う若い人たちも何となくイメージはあるけど実際に何すればいいのかわからないという人は多いと思います。そういう人たちにとってもいい鍛錬になる仕事なのではないですか?

まさに今、一緒にリアルなまちづくりに取り組む人材を募集しています。銀座は歴史があって奥が深くて関わりがいがあるし、何より人もお店も魅力的な街です。

>わかりました!!告知します!

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いかがでしたか?

銀座の街の人たちの戦いの話は本を読まないとちゃんと伝わらないので、ぜひこれ、読んでください。

【銀座にはなぜ超高層ビルがないのか】

そして銀座街づくりについてはこちらのサイトを。

他の街でもこれから様々な戦いが起こっていくと思います。
大資本と個人商店もしかり、衰退との戦い、既成の古き枠組みとの戦い・・
地元の人たちが、自分たちのためにパブリックと戦い、あるいは手を組みながら、あるべき形、ルールをつくっていくということ。
銀座は確かにある意味で”特別”でしょうが、そもそもどこの街も”特別”なはずです。


というわけで、最後は人材募集で締めたいと思います。

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「一般社団法人 銀座通連合会」では、スタッフ(正規職員)を募集しています。

銀座通連合会は、銀座通り、晴海通り沿道の約240店舗を会員とし、まもなく創立100年を迎える商店街組織です。

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 月~金 10時~18時(イベント等により、休日出勤の場合があります)
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 男女は問いません。年齢55歳まで
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