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2017.10.30

国交省でルールをつくっていた先輩に、これからの都市計画について色々聞いてみた。

都市のルールをつくっている(いた)人に話を聞いてみよう、というシリーズ。僕が持っている「都市計画のキホン」「都市計画制度徹底活用法」という二冊の本の著者でもある佐々木さんと知り合ったので、さっそく話を伺いました。 テーマは 「僕らにできることは何ですか?」
聞き手:林厚見/東京R不動産
佐々木晶二:1982年建設省入省、1989年岐阜県都市計画課長、1995年建設省都市計画課課長補佐の時に、阪神・淡路大震災に直面し、被災市街地復興特別措置法を立案、2006年兵庫県まちづくり復興部長、2011年都市局総務課長で東日本大震災に直面し、津波復興拠点整備事業等復興事業の予算要求を立案。2013年内閣府防災担当官房審議官。その後、民間都市開発推進機構. 上席参事 兼 都市研究センター副所長、国土交通政策研究所長などを務めた。


構造的な問題

ー 佐々木さんは国交省や関連機関で様々なルールを設計されてきましたよね。僕らはいま、街・都市のルールデザインに現場の知恵や創造性をもっと入れていくべきではないかと思っています。

解決していくべき問題はたくさんあります。新しい視点や知恵も求められていますよ。

ー 佐々木さんの著書では幅広い領域にわたる的確な指摘がずらずら並んでいましたが、そうした「やるべき」「変わるべき」ものも現実にはいろんなハードルがあるのだと思います。問題や整合性を多面的に検証する必要があるでしょうし、利害関係の複雑さや政治的な問題など、色々あるでしょうし。で、今日はむしろ「僕らが何をすればいいか」を聞きたいと思っています。

うん、わかりました。

ー 佐々木さんは都市計画関連の制度に関して本質的な問題だと思っていることは何でしょう?

言えばキリがないけど笑。そもそも「計画」というのは長期を見通すものというイメージの言葉でしょう? でも今や先のことはわからないわけです。しかも人口は減っていく。だから基本的に「大きな投資」をして長期的に回収していこうというのはダメなんですね。しかし、今の法律には段階的に少しずつコトを起こしていくようなアプローチが仕組めていないんですよ。エリアリノベーションの考え方のように、徐々に地域の面的な価値を上げていくアクションをとっていくのが適切なわけですが、そういう考え方が前提となっていない。

ー なるほど。佐々木さんにそう言われるとなんだか勇気をもらえますね(笑)。

それから、何でもハードで対応しようという発想が根付くあるのもよろしくない。例えば防災で言えば、小さな福祉施設でもスプリンクラーが要ることになって、結果的に投資できなくて廃業していったりする。防災なんて全てハードで解けるものでもない。僕は、地元の地区防災計画のようなソフトなものも防災上意味があるんだという前提の枠組みをつくったりしました。建築の仕様についても、建築基準法がだんだん厳しくなったわけだけれど、これも全部ハードで安全をキッチリ確保する発想でできてきているんです。でもそういう発想だと、細く情緒ある路地なんかも準耐火建築の仕様で覆うことになって、情緒も何もなくなりますよね。

ー そうですよね。ハードで規定をつくれば判断が楽なのは理解できますが、それでは無駄なお金がかかったり、つまらなくなったり、モノができたあとの人間による工夫や努力が生まれにくくさえなる気がします。

それから、アカデミーの世界でも各分野が学問として領域が分かれていて、それぞれその中で議論している感は強いんですよ。それも問題。実際の社会の課題はそれらを横断しないと答えが見えないんですが、組織の体系や思考が「縦割り」であることが阻んでいます。これは根深いことです。

...

僕らにできること

ー なるほどです。このサイトでは、街・都市のルールについての話を、専門家でなくても理解でき、少しずつ関心や知恵が高まるような発信をして、必要な「気運」をつくっていきたいと思っていますが、こうした切り口で僕らにできることはなんでしょう?とまずは投げかけてみていいですか?

気運をつくるのは大事と思いますし、あなた方のように街づくりや建築の仕事をやってきている人なら、実践的にできることはいっぱいあります。法律というのは国全体の話なので変えるのも大変ですが、ローカルでできることも多いんです。それも、条例のように議会にかけるものでなく、自治体の現場と話すことでできることも色々あります。

ー なるほど、今までルールは所与のものとして、変えることを考えなかったんですが、できることは実は多いと。どう動けばいいんでしょう?

私はいまも自治体の都市計画の部署から「自分の裁量でできることで知恵がほしい」と言われることがあって、勉強会のようなことをしながら作戦を練ったり知恵を授けたりしています。

ー どういうことをやるんですか?

具体的な話でいうと、地方では買い物難民の高齢者の問題があります。コンビニにいくのも大変、という。でもいわゆる一種低層住居専用地域ではコンビニもつくれないですよね。閑静な住宅街にしておくためのルールですが、これからは最低限の買い物にいける場所がないのは高齢者にとって死活問題になるわけです。

ー で、どうするんでしょう?

これはマニアックな方法なんだけど、単に住宅エリアに店ができるようにすると何でもアリになってもよろしくない。なのでまず一度、この用途地域を少し大きめの店舗も立てられる「二種低層住居専用地域」にした上で、いわゆる「地区計画」によって制限をするわけです。「このエリアは都市計画上の用途指定としては二種だけれど、地区計画として、市長が許可をした店舗だけは良しとする」とやるわけです。そうすれば、地域社会の問題を解くような店舗は建てられるが、そうでないものはだめ」というルールになります。移動販売の組み合わせをやるならOK、とかね。地元資本の商店のみOKとすることもできます。これは議会を通さず(政治マターにせず)にできるものです。条例はもっと大変ですから。

ー なるほど、まさに法律の隙間を突いている感じです。

そう、法律の隙間はいろいろあって、そこを突くアイディアを出すのです。ちょっと複雑だけど、やれるところからやるのも大事。

...

ルールデザインは仕事になる?

ー ところで、仮に自治体の中でできるルールチェンジの知恵があり、それが街を良くするものだとして、僕らがそうした知恵を色々考える技を身につけていったとして、それは「仕事」になるんでしょうか?正直、ボランティアはなかなかつらいですから(笑)。例えば、都市計画コンサルの会社なんかは、自治体の計画を立案する際にそういう提案はするんですか?

ありますね。

ー ならばルールのアイディアを持っていれば、そういう公の仕事に参画すればいいってことですよね。

ええ、そうです。それが十分な報酬がもらえるかは場合によりますが。

それと、企業、事業者の立場からもルールを変えることが意味を持つことがあります。

ー というと?

例えば、空き家の戸建てをいくつか使って高齢者向けの施設を運営したい事業者がいるとします。それが低層住居エリアだと事務所がつくれないために実現できないみたいなことがあります。事務所だけでも緩和するために、さっきのようなアプローチがありえますよね。

ー あ、、ということは、企業の事業機会を広げるために規制を変えるというのを専門家として仕事にすることができるということですね。ある意味、プロのロビイスト。

ですね。もちろんそのためには「儲けたいのでこうしてよ」ではダメで、行政としての課題、社会的な問題を解決していくようなWin-winを行政に働きかける必要があります。

ー それはそうですよね。そのあたりの視点はまだ我々は慣れてない気がします。そうして産業側と公共側が互いの大義をすり合わせるように前提を変えていくのも、都市の形をよくする手段なのですね。

何か制度を変えて、それによって事業機会が生まれます!といっても、実際にやる事業者がいることは大きいんです。行政も、具体的な事業提案がないと動きにくいものです。作っても誰も使わないじゃないか!となりますからね。でも、事業者の方が、ルールが変えられると思ってないというのがキモなんですよ。別の話で言えば、運送業者が新しい宅配サービスをやりたい、みたいなことがあれば、それが高齢者の問題を解決するんだという話になればルールを動かしやすい。首長でなくとも、行政のキーパーソンにそうした提案をしていけばいい。

ー ううむ、それは仕事になる気がしてきました。社会課題を解決するかたちでビジネス機会を作り出す、ということをルールの解きほぐしでやるというのは、我々の分野でももっと可能性がありそうですね。自分のこれまでの無知や怠慢を感じます。。

今までも、行政でなく市民たちが考えた開発のスキームなんかは色々あります。一つの自治体で成功例をつくれば国も制度変えていく力になりますからね。

...

ー 我々は「公共R不動産」を通じてやりとりしている自治体と、公共施設活用の話で民間事業者を公募するための基準づくりをお手伝いすることが最近ありますが、そういうのもある意味でルールをつくることだし、そこで新しいカタチやルールを埋め込んでいけばいいんだと改めて思いました。

足元と道路

ー ところで僕は再開発でタワーマンションになっていくものが多い中、その足元が味気なくなるのがマズいと思っています。そのあたりどうですか?

地方の再開発では、大資本の店しか入らないとか、色んな問題意識が実際にあります。再開発は許認可のかたまりですから、逆に規制をつくることはその気になればできますよ。行政も、タワマンはあまりやりたくなかったりします。将来の修繕とか色々心配がありますからね。

地域の行政も足元をどうするかは考えていますよ。アイディアを入れればそこそこ動きます。

ー そうですか・・なんだかやる気になってきます。説得力のあるアイディアを身につけなければ・・

世の中、完璧にはできないことが多いのは事実ですが、動いているものをマシにするというスタンスはアリだと思いますね。

ー はい。「どうせやるならせめてここは」という発想ですよね。ところで、別の記事でも書いているんですが、道路の使い方がイケてないなという話があります。ここでも道路の法律がカタいために悩ましいのですが。

道路ねえ。道路は警察マターなので、役所が決められないんですよ。人事的な話で言うと、市長と警察のトップは指示関係にはなくて、村の警察署長も人事も霞ヶ関(警察庁)なんです。アメリカは違うんですけどね。

ー ははぁ。ニューヨークのタイムズスクエアなんかは道路の使い方を柔軟に変えて、道路の真ん中が広場になったりヨガやったりしているのが有名ですが、アメリカはやりやすいと。

まあそうですね。市長の下に警察がいるから、市の方針を反映させやすいはずです。役所や議員は、地元から色んな要望を受ける立場で、もっと人通りを増やしたいんだ!とかそのために策を講じろ!とプレッシャーを受けますからね。札幌大通りみたいに道路の真ん中を公園にしているところは、その部分は道路でなくなってしまうので、その後は警察マターでないので、賑わいをつくるためのいろんなアイディアを実行しやすいということはあります。

小倉魚町サンロードの事例。あくまでも道路のままで、そこに緑地としての行政の制度上の網掛けを行い、道路でありながら公園であり広場であるという「制度上の立体化」を行おうという試み。

ー 警察はむしろ安全第一だから、ある意味カタい面があるのは当然ですね。

そう、でも警察は動かせないなんてことはない。前向きに話をしていけばいいんです。

クルマとコンパクトシティ

ー 道路と言えば、自動運転の世界に都市の姿はどうなるかに最近関心がありまして。あれは都市計画にもかなりインパクトありませんか?

自動運転は今までの都市計画を根幹から揺るがす可能性があると思いますね。

ー ですよねぇ。自動運転は郊外に住むことをむしろサポートする。

それはあります。アレは社会にとっていいことが色々あると思います。移動の様々な問題が解け、人の生活に大きなプラスがあるでしょう。そして、コンパクトシティも違う形になるかもしれない。

ー 僕もそれを思っていました。これからは”歩ける街”だ、ヨーロッパのように路面電車でコンパクトシティだ!みたいな話も実は微妙ではないかと。旧市街大好きな自分としては悩ましくもありますが。

そう、これからの地域交通というとすぐにLRT(路面電車)が出てくるけど、自動運転できれば道路でよいという話になっていく。高齢者も病院に楽にいける。でもやはり、そういうハード投資はお金も動くし、政治的にもウケるんですよ。

ー 数十年で回収していく投資が外してしまったら大変ですからねぇ。そのあたりについては、未来を見通すためのスタディが遅れているのではないでしょうか。

遅れてますよ。都市計画の世界はけっこう文系的で、エンジニアじゃないですしね。そもそも人はなかなか簡単には中心部に引っ越しなんてしませんよ。昔から日本はヨーロッパのように集まって住む民族でなく、散在して住む民族だから。色んなことをバランスさせながら解かないといけない。

...

ー でもコンパクトにしないとインフラの維持が大変に・・

これからは人が減っていく時代で、なのに人がばらばらに住み続ける状態を考えると、インフラは自律型、分散型にしていく方向で解いていくのだろうと大ざっぱには思っています。ちゃんとシミュレーションしないといけないのですが。下水道も分散型で、合併浄化槽にしたり。エネルギーもそうです。

車はけっこう問題多いですよ。燃料電池車とかもね。水素ステーションつくるのに10億かかるのにね。EVにいけばいいんだけど、そうすると部品会社たちが困る、みたいなこともあったり。自動運転の世界は社会構造のバイアスが最もでてる世界だと思いますよ。

ー いやはや勉強になります。僕らはこれまで街の情緒や楽しさというところでやってきたんですが、そのためにルールを変えていこうと思うと、社会課題を同時に解くための論理武装やアイディアが必要だということを改めて理解した気がします。旧市街の維持みたいな話も、幅広い目線から考えていかないといけない。

これから具体的な案件で色々ご一緒させていただくのを楽しみにしています!

(リノベーションまちづくりや公民連携による都市再生を推進するプロフェッショナルたちと一緒にR不動産のメンバーも加わって、公共空間や公共政策に関するシンクタンク/コンサルティングの会社をスタートさせます。そこに佐々木さんもジョインすることになりました。色々、乞ご期待。)